原子7個のトランジスタ?
ブログのタイトルに「科学ニュース」と入れながら、
発表から数日遅れで記事を書いてばかりなものだから、
全然ニュースではなくなっていることが多いのだが、まぁ、理由はある。
はっきり言って、
それが急いで取り上げるべきニュースなのかどうかの判断が難しいのだ。
例えば、次の記事はどう判断したらいいだろう。
シリコンチップの上で、
「原子 7 個分の大きさ」のトランジスタを作った、
という衝撃的なニュースだった。
ただし、意味が分からない。
写真まで載せられているが、その意味については何の説明もない。
原子 7 個分というのが一辺のサイズのことで、
実は 7×7 = 49 個くらいの原子を並べて作ったのか、
文字通りに 7 個の原子だけで作ったのかさえ、読み取れない。
一方、こちらの英語の記事のタイトルを見る限りでは、
「原子7個」で作ったというニュアンスが強いが、それもはっきりしない。
本当に 7 個で作ったのなら、何の原子をどのように並べたのかくらい、
説明してくれても良さそうなものだ。
そしてそれがなぜトランジスタとして働くのかという点も・・・。
写真を見ると、7 × 7 の原子の並びのようでもある。
写真では 7.7 オングストロームというサイズが載っているが、
原子の大きさというのは、種類にもよるが、
だいたい 1 ~ 10 オングストロームくらいだからだ。
さて、こいつに、どのように電圧をかけて使えばいいのか?
電流はどれくらいまで流せるのか?
単なるスイッチとしてしか使えないのか、
音声の増幅に使えるほどなのか?(無理でしょうなぁ)
こんなものは不安定すぎて、
熱やなんかで簡単に壊れてしまうんじゃないのか、
などという、不都合な疑問については一切書かれていない。
計算速度がめちゃくちゃ速くなるだとか、チップのサイズが小さくできるとか、
都合の良いことばかり書き並べているが、
その実現の為には他の問題の方が大きすぎて、まったく現実的ではない。
そもそも、こんなものを作るコストを考えれば夢をぶち壊すほどだろう。
もしこのサイズで量産化できるようになったらニュースにしてもいいと思う。
さて、次の言葉が気になる。
「超小型トランジスター技術の商用化には約 5 年ほどかかるという。」
5 年後に、どう応用して商売するつもりなのだろう。
何も書かれていない。
こういう場合は
「まだ 5 年ほどは研究を続けたいので、引き続き予算を下さい」
と読み替えるべきである。
最後の方には、「量子コンピュータ」への夢を語っている。
まぁ、今の旬のキーワードだし、仕方ない。
量子コンピュータを実現するためにはこういう技術ももちろん必要になるだろう。
しかし今回の成果が、量子コンピュータの実現に直接関係あるわけではない。
ちょっと詐欺くさい記事の書き方だ。
何と言うか、無駄な情報ばかりで飾ったニュースである。
というわけで、この類のものは流し読みして、
記憶の隅にでも引っ掛けておくくらいにしておけばいいのだ。
なんかね・・・
みんなが、科学のニュースに不感症になる理由が分かるような気がするよ。
派手めなタイトルで煽って、毎回、それほど中身がないんだもの。
もし正直に書いたなら、このニュースだって
それなりにすごい事のはずなんだけどな。
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