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2010年5月

2010年5月29日 (土)

原子7個のトランジスタ?

 ブログのタイトルに「科学ニュース」と入れながら、
発表から数日遅れで記事を書いてばかりなものだから、
全然ニュースではなくなっていることが多いのだが、まぁ、理由はある。

 はっきり言って、
それが急いで取り上げるべきニュースなのかどうかの判断が難しいのだ。

 例えば、次の記事はどう判断したらいいだろう。

原子レベルの大きさ、世界最小のトランジスタ開発

 シリコンチップの上で、
「原子 7 個分の大きさ」のトランジスタを作った、
という衝撃的なニュースだった。

 ただし、意味が分からない。

 写真まで載せられているが、その意味については何の説明もない。

 原子 7 個分というのが一辺のサイズのことで、
実は 7×7 = 49 個くらいの原子を並べて作ったのか、
文字通りに 7 個の原子だけで作ったのかさえ、読み取れない。

 一方、こちらの英語の記事のタイトルを見る限りでは、
「原子7個」で作ったというニュアンスが強いが、それもはっきりしない。


 本当に 7 個で作ったのなら、何の原子をどのように並べたのかくらい、
説明してくれても良さそうなものだ。
 そしてそれがなぜトランジスタとして働くのかという点も・・・。

 写真を見ると、7 × 7 の原子の並びのようでもある。
 写真では 7.7 オングストロームというサイズが載っているが、
原子の大きさというのは、種類にもよるが、
だいたい 1 ~ 10 オングストロームくらいだからだ。

 さて、こいつに、どのように電圧をかけて使えばいいのか?
 電流はどれくらいまで流せるのか?

 単なるスイッチとしてしか使えないのか、
音声の増幅に使えるほどなのか?(無理でしょうなぁ)

 こんなものは不安定すぎて、
熱やなんかで簡単に壊れてしまうんじゃないのか、
などという、不都合な疑問については一切書かれていない。

 計算速度がめちゃくちゃ速くなるだとか、チップのサイズが小さくできるとか、
都合の良いことばかり書き並べているが、
その実現の為には他の問題の方が大きすぎて、まったく現実的ではない。

 そもそも、こんなものを作るコストを考えれば夢をぶち壊すほどだろう。
 もしこのサイズで量産化できるようになったらニュースにしてもいいと思う。

 さて、次の言葉が気になる。
 「超小型トランジスター技術の商用化には約 5 年ほどかかるという。」
 5 年後に、どう応用して商売するつもりなのだろう。
 何も書かれていない。
 こういう場合は
「まだ 5 年ほどは研究を続けたいので、引き続き予算を下さい」
と読み替えるべきである。

 最後の方には、「量子コンピュータ」への夢を語っている。
 まぁ、今の旬のキーワードだし、仕方ない。
 量子コンピュータを実現するためにはこういう技術ももちろん必要になるだろう。

 しかし今回の成果が、量子コンピュータの実現に直接関係あるわけではない。
 ちょっと詐欺くさい記事の書き方だ。

 何と言うか、無駄な情報ばかりで飾ったニュースである。
 というわけで、この類のものは流し読みして、
記憶の隅にでも引っ掛けておくくらいにしておけばいいのだ。

 なんかね・・・
みんなが、科学のニュースに不感症になる理由が分かるような気がするよ。
 派手めなタイトルで煽って、毎回、それほど中身がないんだもの。

 もし正直に書いたなら、このニュースだって
それなりにすごい事のはずなんだけどな。

2010年5月28日 (金)

衛星たちのその後

 打ち上げの後、それぞれの機体がどうなったか、
ちゃんと経過を書かないとなぁ、と注目していたのですが、
幾つかについてはすでに連絡がつかなくなっているようです。

相乗り小型衛星3個が不明 「あかつき」とともに打ち上げ

 それぞれの衛星には愛称があるんですね。
 「しんえん」ってのは、UNITEC-1のことでしょう。
 「ハヤト」ってのは、KSATのことかな。

 どれも、しばらくの間は通信できていたようですけれど。
 それぞれの目的が果たせなかったのは残念だなぁ。

 宇宙ってのは過酷な環境で、
放射線で貫かれて電子回路だって誤作動を起こしやすいし、
激しい温度差で壊れやすいし、色々と経験が必要なものなんですね。

 まだまだ宇宙で生き残る方法については知らないことばかりです。
 民間の団体が宇宙について知るのはこれからですね。
 この経験が次に生かされれば良いと思います。

 不意に通信が回復したりといった幸運はないものかなぁ。

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 本命の「あかつき」は順調に進んでいっているようです。
 通信したり、地球の写真を取ったりしています。

 「イカロス」も、まだ帆を開くテストまではやってませんが、
前段階の、姿勢を変えたりするテストなどは成功しているようです。

 見守っていきましょう。

2010年5月27日 (木)

量子テレポーテーション

 このニュースは結構話題になってるようなのだけど、
手を出すべきかどうか、ずっと迷っていた。

16km間隔での「量子テレポーテーション」に成功

 さすがにこれを分かり易く説明するのは難しい。
 私も理解できているわけじゃないし。

 でもこのブログの目的は解説なんかじゃないからいいや。
 世の中によくある誤解だけ解いておこうと思う。

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 まず、量子テレポーテーションの実験の成功は今回が初めてじゃない。
 近い距離ではずっと前から、何度も普通に成功している。
 今回のニュースは、ただ、距離をずっと先まで伸ばすのに成功したということ。

 そして、距離を伸ばしても成功するのは
量子力学が正しい限りは当たり前みたいなもので、
今回の話は技術的な問題を少しだけクリアしたというような内容。
 だから、すごいことなのだけど、そんなに驚く話でもない。

 量子テレポーテーションの実験を行うためには、
ペアになった粒子をあらかじめ二つの場所に送り届けてやらなくてはならず、
送る途中の経路に妨害があると、せっかくのペアの関係が
ほぐれてしまうという問題がある。

 この記事中でも成功精度は89%だとか書いてある。

 さて、ずっと大きな誤解が他にある。
この実験が、物質の瞬間移動と関係があるように考えられていること。
 さらにはデータの瞬間移動でもないから、
相対論で「ありえない話」みたいに言われている超光速通信とも関係がない。


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 だったら、量子テレポーテーションって何なのか?って言いたくなるかも知れない。

 物質の量子状態を、遠くへ運んで再現する、ってことだ。

 物質のミクロな状態ってのは、色んな重ね合わせになっていて、ちょっと複雑である。

 実際、どんな状態なのかを観測してしまうと、
その重ね合わさった幾つかの状態のある一つだけが現実になってしまって、
生の量子状態ってのは観測できない仕組みになっている。

 だから、この状態を遠く離れた場所に再現しようとしても、
通常の通信データとしては伝えることができない。
 だって、送るためのデータを得るには、
その状態を観測してみなくちゃいけないのだから・・・。
 でも観測すると、状態が壊れちゃって本当の姿ではなくなるし。
 そんなデータを伝えたって意味ないし。
 そんなデータを受け取ったところで、
相手先で元の状態を再現するなんてできやしない。

 

 そこで、ペアの粒子を使う方法が考え出された。

 ある粒子の状態を送りたいとしたら、
その粒子と、ペアの粒子の片割れを反応させて、
その反応の結果について「中途半端な観測」をしてやる。
 中途半端な観測では、元の粒子の状態を知ったことにはならない。

 だけど、その結果は通常の通信回線で送ってやることができるような内容だ。
 だからごくフツーの方法で送ってやる。

 その結果を受け取った側は、その結果に応じて、
ペアのもうひとつの片割れに対して操作してやる。
 別の粒子と反応させたりするわけだ。

 その反応の結果、そこに残るのは、
送りたかった元の粒子と同じ状態になっている粒子だというわけだ。

 一方にあった粒子の量子状態を壊すという副作用はあるけれども、
同じ状態を相手側で再現できるという話である。

 情報の一部は、ペアの粒子の繋がりによって運ばれているとも考えられる。
 状態がテレポートしたみたいでもある。
 確かに不思議な話だ。

 このようにして、
「通常回線」を使ったのでは送れそうになかった量子情報を、
「通常回線」で遠く離れた相手に送るという裏技的テクニックが
量子テレポーテーションだというわけだ。

 応用は・・・まぁ、そのうち、誰か何かすごいことを考え出すだろう。

2010年5月21日 (金)

あかつき、イカロス他、無事に分離成功

今朝のロケット打ち上げをネット中継で見ていました。

 次のような感じで進んでいきました。
(時間は手元の時計によるものなので
       中継映像と少しずれてるかもしれません。)

6:58 打ち上げ
7:14? 小型衛星 分離成功。
7:26 あかつき 分離成功。
7:42 イカロス 分離成功。
7:48 UNITEC-1 分離成功。

 軌道投入に成功して良かったです。
 これからこれらの探査機や衛星の成果に注目してゆきます。

2010年5月20日 (木)

明日、ロケットの打ち上げです。

書くのを忘れるとこだった。
延期になっていた探査機の打ち上げですが、

明日(5月21日金曜日)午前6時58分の予定です。

ネットでのライブ中継は午前6時半頃からの予定だそうです。

7時よりちょっと前に起きれば間に合うかな。

タンタル180の起源

 これは面白い!
 記事をじっくり読んでみようと決心するまでが大変だけれども、
理科年表を片手に考えながら読めばよく判る良い記事だ。

太陽系でもっとも希少な同位体の起源が明らかに

 以下は記事の要約・・・というか、私の言葉で説明し直したものだ。
 気がついたら元の記事よりも長くなっていた。

 まぁ、どうやら、こういうことをするのは私の趣味であるようだ。

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 現在の自然界に見られる、
あらゆる種類の原子核については良く調べられている。

 それらが過去の宇宙の歴史の中のどういう反応で生まれたかについては
ほとんど明らかになっていて、
なぜ今のような分量比になっているかも説明がついている。

(へー、知らんかった・・・。)

 ただ一つ、タンタル180を除いては!!!

 いや、ちょっと大袈裟か・・・。
 他にもまだ謎なのが幾つか残っているかも知れない。

 タンタルというのはいわゆるレアメタルで、原子番号は73。
 地殻中の存在率としては金と比べればはるかに多いのだが、
生産のコストの面から言って、かなり貴重な資源の一つである。

 さて、今回の話は、タンタルそのものではない。
そのタンタルの中でも0.012%しかない
「タンタル180」という種類の原子核についてだ。

 こんな少ないものについてもしっかりその起源を調べようっていうんだから、
その執念たるや、すごいよね。
 私なら、「まぁ、それくらい、いいじゃない?」と思ってしまう。

 今までの理論では、その量が説明できなかった。
 量が極端に少ない理由が説明できなかったのではなくて、その逆。
 計算値が、実際の量よりもさらに少なくなってしまうのだ。

 そして、新理論が現れる。
 超新星爆発のときのニュートリノによる反応で生成されるのだという説。
 しかし、この説を取り入れると、
今度は計算値が実際の量よりも大きくなってしまうことに。

(うまく行かんもんやね。)

 で、ここからが解決編。

 タンタル180ってやつは、安定なやつと不安定なやつがある。
 普通の原子核の場合はピコ秒とかの、ほんの短い時間で安定な状態に
変化してしまう原子核がほとんどだ。

 しかしタンタル180の場合は、
不安定な状態のままで安定しているという
ちょっと特殊な状況になっている。
 内部のスピンとかの影響で、乗り越えられない壁があって、
反応が進んでくれないんだよね。

 だから「安定な状態」とか「不安定な状態」という言葉遣いは正しくない。
 記事中で「基底状態」と「核異性体」という用語で、
二つの状態を区別しているのはそのためだ。

 超新星爆発の高温の中では、
この二つの状態がそれぞれ入れ替わったり出来る確率が高くなるんで、
それを考慮した詳しい計算をしなきゃだめだ・・・というのに気が付いた。

 (その詳しい計算の部分が最も難しいのだろうが、
我ら一般人に対しては省略して構わないと思う。)

 そして、二つの状態がそれぞれどれくらい生成されるのかを計算してみたら、
「不安定な状態」の原子核の量が実際の量とピッタリ!
 今までの理論は、安定なやつと、不安定なやつを、
両方とも区別しないで計算に入れてしまったことになるので
量が多く計算されていたというわけだ。

 じゃあ、安定な方のタンタル180はどうなってしまったかって?
 先ほど、「安定な状態」という言葉は正しくないと言ったが、
その言葉の問題がもう一度出てくる。
 正しくは「基底状態」と呼ぶべきである。
 タンタル180の場合、この状態になると、
さっさとベータ崩壊を起こして、タングステンに変化するのだろう。
 半減期は8時間程度しかない。

 だから、この計算によって、
地上に残っているタンタル180の量が全て説明できてしまったというわけ。

 こういう話では、事実と一致するように
理論の方を都合よくいじれてしまうと意味は薄れるわけだけれど、
今回はそういう要素はあまりありませんよ、というおまけ付き。

 ちょっとくらい条件を変えても同じくらいの数字になるので、
この結論はくつがえらんでしょう、と自信を持って言えるわけだ。

 さらには今回の計算内容が、他の理論を向上させるのに、
良い影響があるだろう、というような内容で結ばれている。

 ねーっ?
 素粒子の理論が宇宙論と手を取り合って
発展していってるってすごいよね。
 細かいことも妥協しないで突き詰めるという執念も。

2010年5月19日 (水)

暗黒星雲だと思ってたが、何もなかった・・・。

これだから天文学は油断ならん・・・。

星雲に開いた巨大な穴

「穴が空いてるように見えるでしょう?
でも実は手前にある暗い星雲が影になって、
穴のように見えてるだけなんですよ。」

と説明していたのが、実は本当に穴だった、という発見。

なぜこんなところに穴が空いてんの!?という驚き。

まだはっきり分かってないけど、
星からのジェットで吹き飛ばされたと考えられるんだって。

人工衛星からの赤外線やX線を使った精密な観測なんかが
最近、特に進歩してきているから、
これからこういう発見も次々とあるんだろうなぁ。

そして古い説がひっくり返ったり・・・、
ひっくり返るだけならまだ分かりやすいけれど、
一口では説明できないくらい
宇宙は多様だということが分かったりして・・・。

情報を追いかけるのも大変だわ。


今回の話も、 すべての暗黒星雲の存在が否定されたってわけじゃなくて、
ある場所ではそうなってました、というだけの話だから
いまひとつインパクトに欠ける。

2010年5月18日 (火)

搭載小型衛星、一つ書き忘れ

 昨日書いた記事で、
H2Aロケットに合い乗りで搭載される小型衛星が一つ抜けてた。

 UNITEC-1ってのも載ってるようだ。
これについては忘れてたわけじゃないのだけれど、
私が最新情報を探せなかったので、
何らかの事情で今回は載せられなかったのかな、
などと勝手に判断してしまったのでした。

 合い乗りする「3基の」小型衛星の写真なんていう
別のニュースもあって、そこにはこれが入ってないんだよね。

 3基については10センチ級で、UNITEC-1は30センチ級という違いがあるので
こういう記事になったのかも知れないが・・・紛らわしい!

 JAXAも合い乗りの衛星の詳細については書いてくれてないし。
数年前の資料とかなら見つかるのだけど。

 UNITEC-1というのは、
UNISEC(大学宇宙工学コンソーシアム)というNPO法人による衛星。
色んな大学や専門学校の学生が集まって技術を競い合ったり、
協力したりするのを支援する組織。
 今回は金星近くまで行って、
無線技術や電子回路技術などを検証するそうです。
(アピールが足らんぞ!)

H2Aロケット17号機、打ち上げ延期

 朝起きてネットのライブ中継を見守っていたのだけれど、
打上げの6分前くらい(6:40だったかな?)に天候のため中止。

 うーん、残念。
 一度、燃料を出したりする必要があるので、数日は無理だそうで。
 次の打ち上げ日時が発表されたら、また記事にしますね。

2010年5月17日 (月)

日本の金星探査機など、明日の朝に打ち上げ予定ですよ

 明日(5月18日火曜日)日本時間で午前6時頃、
種子島からH2Aロケット17号機にて探査機などが打ち上げられる予定です。

 午前6時15分頃から、ネットでもライブ中継が行われるとのことです。

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 メインの積荷は以下の2基。

・金星探査機「あかつき」(PLANET-C)
  半年かけて金星へ行き、約2年の間、軌道上から金星大気を観測します。

・イカロス(IKAROS)
  宇宙帆船の実験機です。
  これもうまくいけば半年かけて金星付近へ向かいます。
  帆がうまく開くかどうか・・・それさえもチャレンジです。

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 他にも空きスペースを利用して、
10センチくらいの超小型衛星が幾つか合い乗りする予定だって
聞いてたんだけど、少し古い情報しか見つけられないな。

 多分、次の3基。

・KSAT
  鹿児島大学や地元企業による開発。
   集中豪雨予測の研究のための、大気中の水蒸気分布の観測。

・Negai☆"
  創価大学による開発。
  一番右に点々がついてるってことは「ねがいぼし」って読むのかな?
  8千人の子どもたちの願いごとがマイクロフィルムに入っている。
  カメラで地球を撮ることもできる。
  約20日後に大気圏内に落ちて燃え尽きるそうな。

・WASEDA-SAT2
  早稲田大学による開発。
  パドルの空気抵抗による姿勢制御や通信などの実験。

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 やっぱこういうのは前日に言われないとついつい忘れちゃうよね。

 

 

 

(追記5/18)
合い乗りする小型衛星は他にもあるようです。
追加記事を書きました。

2010年5月16日 (日)

暗視がもっと手軽になるか?

 これ、なかなかすごい話ですよ。
 割りと早くに実現して、当たり前の話になるかも。

 とはいうものの、情報が少ないせいで疑問も多い。
 眉に唾を塗って読んだ方がいいのかな。

暗視が可能になる薄膜技術:携帯等に応用可能

 要約すれば、
赤外線を検知するセンサとそれに応じて発光する素子とを
薄膜技術によって薄い板の上に多層構造として実現することで、
超薄型の暗視カメラとして使えそうだというもの。

 普通の暗視ゴーグルは赤外線を増幅するのに数千ボルトとかの
電圧が必要だが、これは5ボルトでいいらしい。

 リンク先にある動画は
BMWの車に搭載している暗視カメラ(サーモグラフィ)の映像であって、
今回の物とは関係ないものである。

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 さて、疑問点は、いくつかある。

 目に見えない赤外線といっても、波長の範囲に幅がある。
 可視光よりちょっとだけ周波数の低い「近赤外線」と、
温度を持つあらゆる物体が自ら常に放っている「遠赤外線」だ。

 遠赤外線を見る装置は「サーモグラフィー」と呼ばれている。

 近赤外線の方は、
人間の目には見えないというだけであって、普通の光と似ている。
 つまりその光で物を見ようと思ったら別に光源が必要だ。

 この記事の暗視というのは、一体どちらを見るものだろうか?

 記事中に「患者の体温を表示する」とか、
従来は数千ボルトが必要だとか書いてあるので、
やはりサーモグラフィーのことなのか。

 近赤外線なら、普通の携帯などに使っているCCDカメラの
守備範囲にあるので、
この記事のような薄膜方式でなくても実現できそうな気がする。
 というか、似たものならすでにある。

 どっちにしてもレンズなどを使って
センサの上に像を結んでやらないと使えないのではないだろうか。
 あるいは視野角を極端に狭くして、正面からの光だけを受けるとか・・・。

 だから車のフロントガラスやメガネに応用できるとかいう予想はちょっと
先走りすぎのようにも思えるのだ。

 せいぜい暗視カメラの小型化、低コスト化くらいだろうと思う。
 そうなると携帯電話のようなものになら入れられるだろうから
タイトルは間違っちゃいないか。

 技術的には(もしホントなら)すごいと思える。

(電子ペーパーなんかも初めて聞いたときは嘘だと思ったもんな)

2010年5月15日 (土)

なんかスゴイ量子光学デバイスを開発!

 このニュースは是非とも取り上げなきゃ、と思っていたが、
内容をもっと良く調べようとしているうちに数日が過ぎてしまった。

超伝導人工原子を組み込んだ新量子光学デバイスを開発

 最初に新聞記事で読んだときには
「なんかすごそう」という感じだけは伝わってきたのだけど、
説明が足りないせいで、ちっとも分からなかった。

 情報源を探して読んでみると、今度は専門的過ぎて良く分からなかった。

 まず、「人工原子」という用語が分かりにくい。

 初めは、あれかと思った。
 ほら、ウラン以上の原子番号を持つ、天然に存在していない元素!
 核反応を利用して人工的に作り出すやつだ。
 よく考えたらありゃ「人工元素」と呼ばれてたかな?

 どうやら「人工原子」ってのは、ナノテク用語らしいのだ。

 カーボンナノチューブだとか、薄膜技術とかで、
原子を並べて変わった構造を作ってやると、
その中に捕らえられた電子が変わった挙動を示す。

 それは金属中にあるような自由電子の振る舞いとは違っていて、
どっちかというと、
普通の原子の中にある電子の挙動とかなり似ている部分が多いのだけれど、
それでもかなり違う性質を持っていたりする。

 「こりゃ、新しいタイプの原子を人工的に作ったようなもんだよ!
ってんで、そういうナノ構造を「人工原子」と呼ぶのだそうだ。

 なんだかちょっとおかしな用語だね・・・。
 その内に慣れてくるのかな。

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 それさえ知ってりゃ、今回のニュースは簡単だ。

 超低温で使えそうな(逆に言えば超低温にしてやらないと働かない)デバイスを
「人工原子」として作ることができたので、
そこに光(電磁波)を入力したりという具体的な応用操作がやり易いように、
周りに色々くっつけて、手軽に実験できるようにまとめるのに成功しました!って感じだ。

 試してみると、役に立ちそうな面白い性質があることが色々と分かったので、
これからこういう感じで、もっとすごいものを作っていくぞ!
 ・・・という希望を感じる明るいニュースである。

 光スイッチだとか、量子コンピュータとかに応用する点で、
普通の原子の構造を使うよりも効率が良さそうだと色々書いてある。

2010年5月14日 (金)

96億年前の銀河団を見た!

 私は天文関係には疎いのであまり感動していないのだけれど、
現代に生きていて最先端の話題に触れる機会があるのだから
一応はチェックしておいた方がいいか、という感じのニュース。

見えない光で発見!96億年前の巨大銀河の集団

 要約すると・・・、

 96億光年先にある銀河団を発見した。
 これまでは92億光年だったからちょっと記録更新。

 遠くから来る光は、宇宙の膨張の影響で波長が間延びしているので、
赤外線の領域を調べないと、距離を特定するのは難しい。

 ・・・それはつまり、赤方偏移の度合いでも調べてんのかな?

 あと、X線は地上観測は無理なので、人工衛星から調べたそうな。

 とにかく、最新のセンサーの助けと、研究者たちの努力によって、
自分たちが見ているものが確かに銀河団であることを確認した、
ということらしい。

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 で、何が分かったかというと・・・、

 これは96億年前の宇宙の姿を見ているわけだけど、
銀河団に属する銀河はこの頃から、なぜか赤いものが多い。
 新しい星を産んでいなくて、成長が止まっているということらしい。

 銀河団に属していないような単独の銀河は成長してるのが多いのに、
この差は何なんだ。

 じゃあ、いつ頃までは成長していたのか?

 宇宙にはまだ分からないことが一杯だー!!!
 うーん、もっと以前の姿が見たい!

 ・・・という、分かったことよりも
分からないことの方が増えたという話なわけだ。
 これが科学の面白さだね。

 少し興味が出てきた気がする。

2010年5月13日 (木)

太陽光発電で100%自給可能?

 なんかスゴイ新発明でもあったのか、と胸が躍るニュースです。

100%自給可能な太陽光発電 水素で効率変換、同志社大開発

 しかし具体的に彼らがどんなことを成し遂げたのかを知りたくて
記事を読んでいくと、どうやら既存の技術の組み合わせのようですわ。

 まず、太陽電池で発電した電力を使って
水道水を電気分解して水素を発生させる。
 その水素は、後から色んなエネルギーとして使えますね。

・・・という、記事を読む限りでは単にそれだけのよう。ホント?

 それのどこが新しいのか。
 そこを書かなくちゃいかんでしょうが!

 多分こういう事だと思います。

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 太陽電池を使って各家庭で発電された電気は、
昼間は家に誰もいないので、消費されない。

 充電すればいいと言っても、バッテリーも高くつくし、
寿命もあるので、あまりいい方法ではない。

 でも余ったエネルギーは電力会社に売ればいいじゃん。
 そうすれば無駄にはならないでしょ?

 いやいや、電力会社は各家庭の電気をあまり買いたくないんです。
 それは単にケチだから、というわけではなくて、
電気の質を維持するのが大変だからです。

 私たちは普段意識しないで恩恵に与っているのですが、
日本の電気の質はかなり優れているようです。
 海外へ行ってご覧なさい。
 電圧はちょくちょく変わるし、停電するし、ノイズも多いし。

 太陽が照ったり陰ったりするごとに、
その地域一帯の電気が影響を受けて変動するなんて嫌でしょう?!

 というわけで、売らずに自宅で消費してもらうのが一番。

 水素に変えておけば、燃料電池で発電もできるし、
その時に発生した熱も、温水を作るのに同時に使えるし、
一気に燃やして高熱を得たり、効率のいい使い方が期待できる。

 記事にあるような「100%の自給も可能」なんてのは
頭の悪い読者を騙すためのただの大風呂敷で、
その辺りは記事のタイトルにするほど関係のあることじゃない。

 太陽電池や燃料電池の性能がめちゃくちゃ上がれば、
そりゃあ、そういうこともできるでしょうよ。
 でも彼らが今回それをしたわけじゃない。

 疑問は、発生した水素をボンベに詰めたりするために
追加で電力が必要だろうけど、その辺の効率はいいのかな?って辺り。

 それを実証するための実験なんでしょうね。

2010年5月12日 (水)

タイムトラベルは実現可能?

最近面白いニュースはない。

つまらないニュースならある。

そういうのは無視してやり過ごそうと思ったのだが、
つまらないニュースにこそツッコミを入れて、
何とか楽しくしようじゃないか。

このブログは科学通の人以外に向けてやっていくつもりなので、
ニュースのどこがつまらないのかを書くだけでも
新鮮に映るかも知れない。

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 次のニュースは「車椅子の天才」として有名な
あのホーキング博士が「タイムマシンは可能だ」と語ったという
興味深いニュースである。

ホーキング博士またもビックリ発言!「タイムトラベルは実現可能」

 しかし、読んだ後でがっかりする。

 彼は「相対論的な効果を使えばずっと未来へ行くことができます」という
内容のことを語ったのである。

 未来へ行けることについては物理学者だけでなく、
そこらへんの科学好きの人にとっても極めて常識的な話で、
ほとんど誰も疑ってないと思う。

(つまり、未だに相対論を認めていない偏狭な人以外は
ずっと昔から受け入れている内容だろう。)

 こういう事情であるから、普通はタイムマシンの発明とか聞くと、
過去への旅行ができる装置のことを思い浮かべるのである。
 しかし今回の話は過去ではなく、未来への旅行のことのみである。

 未来へ行けることはすでに常識だ、とは言え、
それを実現するのは極めて困難である。
 というのは、人間を光の速度近くまで加速しなければならず、
今の科学技術では、コストの面からしてほとんど不可能だからだ。

 彼は、それを実用化できるような
新しい展望を語ったというわけでもない。

 こんなことが今さらニュースになる理由も、
その価値も良く分からない。

 そういうおかしなニュースだ。

 記事中の推測では、
多分、これから始まる予定のディスカバリーチャンネルの特集番組の宣伝とか、
話題作りのようなものだろう、ということだ。

 うーん? 結局この記事自体が番組の宣伝になってるんじゃないか?

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