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2010年6月

2010年6月18日 (金)

ニュートリノと反ニュートリノに性質の差があるかも

 またまた、素粒子の標準理論がほころび始めたことを示す報告。

 

ニュートリノと反ニュートリノで、主要パラメータに差がありそうな結果(英文)

 アメリカのフェルミ研究所では、2003年頃から、
MINOSという、ニュートリノ振動のための実験施設が稼働している。
 どうやらそこで、ニュートリノと反ニュートリノで、
異なる結果がでているようである。

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 最近、あちこちで、
素粒子の標準模型では説明できない結果が
出ているという噂が漏れ聞こえ始めている。

 素粒子の実験というのは、
膨大なデータを分析して統計を取り、
既存の理論からのごくごく僅かなズレを見出すようなものが多い。

 現場の研究者としては、正確な分析結果が出揃う前に、
「これは何か新しいことが起きていそうだぞ」
という予感があるのだろう。

 先日紹介した「ニュートリノ振動を直接的に確認」という話も、
まだ統計的には確実ではないので断言はできないけれども、
おそらく「ニュートリノ」には質量があるだろう、という話だった。

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 現在の素粒子論では「標準理論(標準模型)」と呼ばれる
枠組みがあって、1970年代にほぼ確立している。
 ここまでは正しいだろう、と大方の研究者が認めている理論だ。

 その後、さらに発展させた理論は幾つも出ているのであるが、
今のところの実験結果を説明するためには
標準理論で事足りていたので、
理論を発展させる動機がなかったのである。

 標準理論ではニュートリノの質量を 0 だとしていた。
 これは、敢えて質量を考えて理論を複雑にしなくても、
今までの結果は標準理論で説明できていたからだ。

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 さて、今回の結果は、本当ならばさらにすごい。

 「ニュートリノ振動」という現象は
ニュートリノに質量があることの有力な根拠となるものである。

 ニュートリノと言っても幾つかの種類があって、
進む過程で別種のニュートリノに変化したり、
戻ったりを繰り返す現象が「ニュートリノ振動」である。

 それを調べていたときに、
どうやら普通のニュートリノと反ニュートリノでは
その変化の具合に差があるようだという報告である。

 これもまだ確実に認められたわけではなく、
さらなる証拠、他の実験施設での追試なども必要だろう。

 本当なら標準理論の範囲を超えているし、
それを説明するために、新たな理論が必要になるだろう。

 なぜ我々の知っている範囲の宇宙には「普通の物質」ばかりで、
「反物質」が多量に存在していないのだろう、という、
アンバランスの謎が説明できるようになるかも知れない。

2010年6月15日 (火)

はやぶさ報道 と サッカー報道

 テレビは「はやぶさ」を完全に無視することなく
それなりに報道してくれたと思うよ。

 だけど、サッカーの勝利を
「歴史的な快挙だ」と言って
今日一日、時間を惜しまず、何度も何度も報じるのを見ていると、
ちょっと悔しくなってしまうな。

 確かにサッカー日本代表を応援している人口は
はやぶさに関心のある人口とは
比べものにならないくらい多いのかも知れない。

 だけどさ、
試合本番を迎える前に、朝も昼も夕方も、
毎日毎日、あれだけテレビで紹介すれば、
関心を持つ人の数も、そりゃあ、増えるんじゃないのかな。

 「サンプルが入っていれば世界初の成功となる」

なんて矮小化された表現じゃなくって、
「歴史的な快挙だ」って、讃えてほしかったな。

人工光合成の可能性にぐっと近付く発見

 今回のニュースはちょっとすごい。

人工光合成の実現に大きく一歩前進 高活性光触媒材料を発見(NIMS)
物材機構、リン酸銀に高い酸化力を持つ光触媒材発見(日刊工業新聞)

 簡単に言えば、
植物の光合成に近い効率で光を利用して
化学反応を起こさせる物質を見付けたということだが、
まぁまぁ、そんなに甘い話ではない。

 まだ、直接、水を水素と酸素に分解できるわけでもないし、
広い波長の光を全て利用できているわけでもないから、
これでいきなり世界が変わるというということでもないようだ。

 それでも素晴らしい前進なのである。

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 「光触媒(ひかりしょくばい)」って書かれている商品が目に付く。
 しかしそれが何なのか、
ちゃんと消費者に伝わっているのだろうかと思うことがある。

 それは私自身がはっきり理解しているわけではなかったからだ。
 光をエネルギーにして、
抗菌したり、汚れを落としたり、脱臭したりするらしい。

 どうやって???

 触媒というのは、化学変化の途中に使われるけれども、
自分自身は最終的に元の状態に戻るような物質だ。
 だから、そこにあるだけで、何度でも繰り返し使われる。

 絶対起きないような化学変化が、
そこに触媒をちょっと混ぜてやるだけで、
すごい勢いで進んだりするわけだ。

 しかし残念ながら、
エネルギーが必要な化学変化は起こせない。

 ところが、光触媒というやつは、
光のエネルギーを受け止めて、
それを使って、普通では起こらない化学変化を起こし、
最終的に自分自身は元に戻って、
何度でも同じ反応を起こし続けるのである。

 それが抗菌やら汚れ落としやらに効くのはなぜか。

 この光触媒が水を分解したときに出来る物質が、
抗菌作用を持ってたり、汚れを分解したりする。

 そういう副次的な効果を利用した商品だというわけだ。

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 出来るなら、もっと直接的な効果を利用したいものだ。

 水を分解して水素と酸素を取り出して、エネルギーとして使うとか、
二酸化炭素から酸素を取り出すとか・・・。

 光合成のようなことを人工的にやりたいのである。

 しかし残念ながら、
そこまですごいことはまだできていないのだ。

 二酸化チタンというやつは、ひと工夫すると、
このような光触媒として使える。
 この効果はもう何十年も前に発見されているのだが、
エネルギーとしては紫外線しか使えないので効率が悪い。

 最近、チタンを使った物質の研究が進んでいるのは
この辺りの改善を狙った研究が広く行われていることとも関係している。

 先日の「光ディスクに使えそうな新素材?」という私の記事で紹介した研究も
この流れと無関係ではないような気がする。

 このような研究は他にも色んなアプローチで行われていて、
何か発見されるたびに「人工光合成、実現か!?」と騒がれてきたのだった。

 今回のニュースは
それらの成果が一気に霞むほどの効率を実現したようだ。

 まだまだ、超えなくてはならぬ問題は色々とあるのだろうが、
期待が持てそうな話である。

2010年6月14日 (月)

「はやぶさ」帰還成功!

 昨晩の「はやぶさ」の大気圏再突入については
一般のニュースにも取り上げられているので
わざわざここに書かなくとも結果は知っているだろう。

 どこかのニュース記事を引用する必要もなさそうだ。
 夜空に輝いて散る美しい映像はあちこちで見ることが出来る。

 連日「はやぶさ」の事ばかり書くのも気が引けるのだが、
それでも書いておきたいのである。
 それほどの大イベントだということで・・・。

 全てが順調で、何の問題もなかった。

 風がなければ誤差1キロ以内の位置に落とせるという話が
あらかじめあったらしいが、
その通りに、予定位置の1キロ以内に落とせたらしい。

 何という精密誘導技術!
 ニュートン力学はここまで使いこなせるものなのか!

 着地点は昨晩のうちに特定され、ヘリで確認され、
今日の夕方に処理班が回収作業を行った。

 カプセルの中身の有無については
それほどこだわらないというようなことを前に書いたが、
ここまで成功してしまうと、やはり期待してしまう。

 そのニュースが入ったらまたすぐに書くだろう。

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 このイベントのために、昨晩のネットは盛り上がった。
 実のところ、アクセスが多すぎて、
どこの実況サイトにも満足に繋がらない状況だった。

 しかし冷静に考えてみれば、
日本に一億人いる中の、
はやぶさに強い興味を持った、たった数万人だけが
一斉に同じところにアクセスしようとして
「繋がらないぞ」と騒いでいただけのことかも知れぬ。

 (ネット以外の私の周囲ではこの話題なんか一切出ないんだもんな。)

 テレビで実況中継なんかしてもらいたかったが、
相変わらずいつものような番組をやっていただけだった。

 まぁ、それは仕方ない。
 テレビ番組というのは、
スポンサーとの契約で計画されるものだから、
結果がどう転んでも絵になるようなイベントしか
扱うことができないだろう。

 だからそういう点ではもはやテレビには期待していない。

 しかし、高視聴率を求めて、
同じような番組ばかりになっているというのはどうなんだろう。

 コーヒーとお茶がよく売れるからって、
二、三種類の売れ筋商品しか並んでいない自動販売機が
少し前には良く見られたが、あれには全く魅力がなかった。
 似てるんじゃないかな。

 まぁいいや。 つまらなきゃ、見なきゃいいだけだ。

 こんな具合に、たまには科学ニュースにかこつけて
前々から思ってることを差し挟んだりすることもある。
 そっちの方が長くなることも多いかも知れないが。

2010年6月13日 (日)

「はやぶさ」本日帰還!

科学好きもそうでない人も関係ない。
もうネット上ではお祭りイベントである。
Googleのトップページも「はやぶさ」になっている。

機械に人格を見出して応援したり、
感傷的になっているところが日本人らしいというか・・・。

昨晩、わりと正確なイベントの時刻が発表された。

カプセル分離 19時51分ごろ(日本時間)
カプセル再突入 22時51分ごろ(日本時間)

こういう情報は非常にありがたい。

最期の最期に「はやぶさ」本体に指令を送る計画もあるようだ。
「はやぶさ」大気圏突入前、地球撮影に挑戦(読売新聞)
なんか、あまり感傷的になるまいとしている私でも涙が出そうになってくるな。

ライブ映像はどこで見れる?
このあたりの情報は、興味を持って探せば簡単に見つかるが、
そうでない人にはちょっとメンド臭い。

はやぶさ管制室からライブ(音声なし)
宇宙教育テレビ放送 (12:45~15:00)(19:30〜24:00)
和歌山大学・現地からの映像(22時30分~23時すぎ)

あとはここのツイッターをチェックするくらいかな。
ニコニコ動画でもオーストラリアからの生中継をやるようだなぁ。

NECも画像配信に協力してくれてる。
メディア・アイ・コーポレーションも。
上に書いた管制室ライブと同じ映像だろうけど、
サーバーの負荷が大きすぎて繋がらなくなるかも知れないし。

 うぉー、どこ見たらいいんだ。

 もう、すぐそこまで来てるんだなぁ。

 わざわざ私が情報提供のお手伝いするまでもないくらい、
大変な盛り上がりぶりだな。

2010年6月12日 (土)

「はやぶさ」が明日の夜に帰ってくる!

 明日はいよいよ、
小惑星探査機の「はやぶさ」が7年ぶりに地球に帰ってくる。

 時刻は6月13日(日)の夜の11時頃。

 日本からは直接何も見えないが、
ネットで夕方6時頃から特別ライブ中継があるらしい。

 検索すれば色々と出てくるが、例えば、こことか。

 「はやぶさ」本体からカプセルを分離するのは夜8時頃。
 地球から6万キロの位置(月までの距離の1/6くらい)である。

 そこから地球の引力に引かれて、
秒速12kmという、人工物としてはあまり例のない速度で突入する。

 上空10kmあたりで、パラシュートで減速し、
秒速10m でオーストラリアの砂漠のどこかに落下する予定である。
範囲は幅20キロ、長さ200キロだって。
 確かに広いけれども、宇宙からこの範囲を狙えるってのもすごいな。
地球儀の上ではほとんど点みたいなもんだよ。

 現地では2週間くらい前から、
発見チームが待機していて、準備を進めている。
 発見のために、色んな機関が協力してくれている。

 カプセルの直径は40センチくらいで、中華鍋のような形。
 この辺りの記事に図や写真入りで色々書いてくれてある。

砂漠の星くず見つけ出せ はやぶさカプセル回収大作戦(朝日新聞)
はやぶさ最後の大仕事 試料カプセル分離へ秒読み(中日新聞)
はやぶさ13日夜に分離 ガスで包み岩石保護 カプセル工夫満載(毎日新聞)

(実は新聞各社が事前にこんなに沢山の記事を書いてくれるとは思わなかった。)

 カプセルの分離は、火薬で接続部分を焼き切り、バネの力で放り出すことで行われる。

 もともと2007年に帰還予定だったこともあり、
これらがうまく動作するかはかなり心配なところだ。

 カプセルの中にサンプルがちゃんと入っているか?
 まぁ、もし何も入ってなかったとしても、
私としてはカプセルの回収に成功してくれるだけでかなり嬉しい。

 この探査機は元々は実験機であり、
積み込まれたあらゆる仕組みがほとんど初めてのチャレンジばかりなのだ。

2010年6月11日 (金)

「イカロス」帆の展開に成功!

 今日中に書いておかないといけないグッドニュースが入ってきた。

イカロス「順光満帆」、宇宙で帆広げる 加速を検証へ(朝日新聞)
宇宙ヨット「イカロス」 “帆”を展開(産経ニュース)

 先日ロケットで打ち上げられ、
今は金星探査機の「あかつき」とともに金星方面へ向かっている
宇宙帆船の実験機「イカロス」が、無事に帆の展開に成功したようだ。

 実は昨日から成功の知らせを聞いていたのだが、正式発表は今日だった。

 遠心力を利用して帆を開くため、
今月の初めの頃から少しずつ本体の回転を早めたり、
帆を開くためのモーターを少しずつ動かしたりしていた。

 しかしわずかに予想と違う動きをしていることが分かったため、
予定を延期して慎重に作業を進めていたのだった。

 帆を完全に開く前の段階で、
太陽光の影響がどれくらい出ているかを確かめていたらしい。

 こういう慎重さは必要だね。
 宇宙では何が起こるか分からないし、
それを探るための実験なのだから。

 さあ、これからが本当の実験の始まりだ。
 太陽光を利用した飛行がどれだけ有効なのか、
世界初のチャレンジである。

2010年6月10日 (木)

光ディスクに使えそうな新素材?

 評価に苦しむネタは他にもまだあって、
このブログに取り上げるべきか、長い間迷っていた。

新素材発見 ブルーレイの200倍情報記録も

 タイトルだけ見れば、やはりすごい話のようなのである。

 しかし要約すれば、
五酸化三チタンのナノ結晶にレーザー光を当てると、
電気の通し易さの異なる別の状態に変わるし、
逆の反応も起こせることが分かった、というだけの内容である。

 このニュース記事には、知りたいと思う肝心の部分が書いていない。

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 なぜブルーレイの200倍の記録が可能なのだろう?
 紫外線レーザーの短い波長を使えば・・・という単純な話でいいのだろうか。

 紫外線~近赤外の波長で変化が起こるなら、
そこらの自然の光によって徐々にデータが消えてしまったりはしないだろうか?
 (この点は、読み書き可能なDVDやブルーレイでも実は同じ問題があったりする)

 書き込みはいいとして、読み出しは光を使って出来るのだろうか?
 (後で見つけたこちらの記事を見ると、
二つの状態はそれぞれ色が違うと書いてあるから、それは可能なのだろう。)

 これらについて、あれこれ話を広げて不確かなコメントはできるけれども、
書いても無駄かもしれない。 情報が足りないのだから。

 そもそも光記録媒体として使えるというのも「可能性」を語ったに過ぎない。
 こういう話に踊らされてあまり真剣になってはいけない。

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 評価出来る点は、この結晶を簡単に作る方法も発見されているというところ。
 安く生産できる可能性があるということだ。

 現在のDVDやブルーレイのディスクにはレアメタルを使っているらしい。
 (これは知らなかった。)

 今回の材料が使えるなら、レアメタルを使わずに済むことも期待できる。
 これも大事なことだと思う。

 それより何より、ありふれた材料から安く作れるものに、
これまで知らなかった新しい性質が見いだせたことが素晴らしい。

 選択の幅が広がったわけだし、
この周辺で研究しがいのある方向が新たに拓かれたということだ。

 こうして色々調べながら書いているうちに、何だか、
この材料が光ディスクの材料としてかなり有望な気がしてきたな。

 自然と期待が膨らんでくる。

2010年6月 9日 (水)

光の波長を瞬時に変換

 タイトルを見る限りでは、
今回とても重要な何かが達成されたように思える。

特殊な結晶で光の波長変換に成功 京大グループ、光通信の高速化へ

 このニュースの価値を判断するのに時間がかかってしまった。

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 特殊な結晶というのは、フォトニック結晶のことである。

 フォトニック結晶というのは、
その中を通過する光の振る舞いを制御するために
構造をナノレベルで人工的に設計して作成したもの。

 今回の話はこういうことだ。

 光が物質の中を通過するときには、光の速度が落ちるので、
物質中では光信号の波形が押し縮められたような具合に変化する。

 物質から再び外へ出るときには、その波形は元に戻るわけだが、
光信号がまだ物質中にあるときに、
その物質の屈折率が変化させられたら何が起こるか?

 屈折率というのは、その物質中の光の速さと関係している。
 というより、物質の種類によって、
その中を進む光の速さに差があるから屈折という現象が起こるのだ。

 光の波形が同じままで、いきなり、物質中の光速が変化するということだ。
 光が物質から出たときには、周波数が変化していることになる。

 こういう原理で周波数をずらしておけば、
幾つもの信号を重ねて光ファイバーで送れるので、
とても効率的だよね、という話だ。

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 とはいうものの、周波数変換をして、信号を重ね合わせることは
すでに行われている。

 今回の話は、電気に変換しないで直接それができる可能性が
出てきたということであって、
しかもその方式なら、高速で変換できるという点が新しいようだ。

 ただし、まだ、実用化されるレベルではないようである。

 そうなると、話は微妙だ。

 フォトニック結晶を使った光スイッチや
周波数変換などについては10年くらい前から理論的な話はあったようだし、
数年前からチョコチョコと
基礎的研究の成果が発表されてきていて、
今回のことだって特に新しい話でもないようだ。

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 実はそういう昔からあるチョコチョコした成果のニュースの中には、
今回の記事に書かれているのと同じ研究室からのものも
多く含まれていたりする。

 なるほど、ここはずっとずっと以前から
最先端を進み続けているというわけだな。
 まぁ、いきなりこんなことができるわけもないので
当然といえば当然だが。

 こんな具合にして、
少しずつ、色んなことが出来るようになってきていますよ、という
現在進行中の研究の途中報告のようなニュースであるようだ。

 こういう研究の一部が、
ある時、ニュースにもならずに
知らない間に実用化されていたりするわけだ。

2010年6月 8日 (火)

「はやぶさ」の帰還は次の日曜日

 小惑星イトカワまで旅していた宇宙探査機「はやぶさ」の帰還の日が
とうとう次の日曜日にまで近づいた。
 そろそろ何か書いて、気分を盛り上げておかないと。

 新聞各社も、これについては色々と書いてくれている。
 人々の関心の高さを嗅ぎつけたのかな。

 現在の地球からの距離、約 240 万キロメートル。
 かなり近づきました。
 月までの距離の約 6 倍。

 相対速度は秒速 5 km くらい?
 ちょっとずつ速くなってきているようだ。

 日曜日の午後6時頃から11時にかけて、ライブ中継もあるらしい。
 まだアドレスは未定。

 一月前から3回ほど軌道修正を行っていて、いずれも成功している。
 これで地球への帰還は確実になったそうだ。

 4回目の軌道修正が明日行われるという情報が数時間前に入った。
 5回目は必要なら行うが、今のところ必要ではないそうだ。
 これらは、落下位置の範囲をせばめるための修正だ。

 設計寿命をはるかにこえて、まだこうしてエンジンが使えているのは奇跡に近い。

 「はやぶさ」本体は、地球に突入して燃え尽きる。

 それ以前にカプセルを発射するわけだが、
発射の仕組みがうまく動作してくれるかどうか・・・。

 他にも色々と書く予定だったが、長くなったのでこれくらいにしておこう。

2010年6月 7日 (月)

ニュース記事の質が上がった気がする

 ニュースのネタには困ってないのだが、
まとまった時間がとれないと、
深く考えたり、周辺事情を調査したりができないな。

 まぁ、科学ニュースは数日くらい遅れても
古くなってしまうわけでもないから
あまり慌ててはいないけれども。

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 ところで、最近はメディアの取り上げる
科学ニュースの質が何となく向上しているように思う。

 以前は
「ひょっとしてマスコミはわざと日本の科学的進歩を
妨害しようとしてるのだろうか」と疑いたくなるほどに、
重要だと思われるニュースが無視されたり、
意味の通じない記事が載せられたりしたものだ。
(テレビではあまり変わってない気もするけれども)

 最近は科学記事が儲けにつながると判断して、
ちゃんと科学のことが分かっている記者を専門に配属するようになったのか、
そういう人材が多くマスコミへ流れていったのか、
あるいは、各機関がメディア向けのリリースを
分かりやすく工夫して発表するようになったせいなのか。

 あるいは私の気のせいなのだろうか。

 近頃は逆に、政治関係のニュースの内容が
さらにひどく幼稚になってきているような気がする。

2010年6月 4日 (金)

量子もつれを発生するLED

最近、技術の進歩が加速しているような気がする。
追い切れないほどのニュースが入っている。

その中でも特にこのニュースには驚いた。

電気的制御で量子もつれ光子対を発生するLED開発

詳しくはよく分からない。
続報を待ってみたけど、やはりネイチャーを読むしかないのかな。

出来そうな気はするので、嘘だろという気はしないけれど、
それでも、もうこんなことまでが出来てしまうとは・・・。

量子がらみの実験がすごく身近に、手軽になりそうじゃないですか。
そうなると、さらに研究が加速する?
ついて行けるかしらん。

2010年6月 3日 (木)

KSATは生きていた!

先日のロケット打ち上げで相乗りしていた
民間の小型衛星が幾つか行方不明になっていましたが、
そのうちの一つと通信することができたようです。

KSAT交信成功(南日本新聞)
不明の相乗り衛星ハヤト「生きてた!」(毎日jp)

 行方不明になった時に書いた記事で私は
「不意に通信が回復したりといった幸運はないものかなぁ。」
なんて書いてますが、それっぽいことになって嬉しいです。
 幸運というより、努力の結果といった感じですが。

どうやら、打ち上げ直後は別の信号を受信して勘違いしていたようですね。

目的からして、個人的には小型衛星の中で一番応援してたやつです。
今後の活躍を期待します。

2010年6月 2日 (水)

ニュートリノ振動を直接的に確認

わりと大きなニュースなので、早めに取り上げておこう。

ニュートリノ振動:国際実験で直接的に確認(毎日jp)

まぁ、記事を読めばだいたいのことは分かるし、
わざわざ付け加えるほどの言葉もない。

それでもこのニュースを無視したままで、
他のことを書くなんて気分にはなれなかったのである。

最先端の検証が今、こうして進んでいるんだなぁ、って感じ。

(敢えてこれ以上書こうとすれば話が脱線するので、これくらいにしとこう。)

2010年6月 1日 (火)

強いマグネシウム合金が出来た!

 今回の記事に正しく「ツッコミ」を入れるにはどうしたらいいだろう。

 下手すれば、真面目な研究の成果を茶化すことになってしまいそうで、
少しためらってしまう。

熊大が世界最 高強度で軽いマグネシウム合金開発(くまにちコム)
超々ジュラルミン並み強度 マグネシウム合金開発(産経ニュース)
強度世界一のマグネシウム 熊本大、合金を開発(47ニュース)

 簡単に説明すれば、
従来は強度が 440 メガパスカルだったマグネシウム合金の強度を
512 メガパスカルにまで上げることに成功したという素晴らしい成果についてだ。

 良いことばかりが書いてあって、
弱点についてはひとつも書いていないので、
記事をそのまま信じていいものかどうか不安になってしまう。

 しかし間違ったことは書いてないようだ。
 レアメタルも使うようだが、コスト的には問題なさそうだ。

 今回の成果により、
ジュラルミンなどのアルミ系合金の強度を上回ったことになる。
 さらにマグネシウムは非常に軽いため、
同じ強度でも重量は、アルミ系合金の 2/3 程度で済むという。

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 ここで疑問だ。

 今回はマグネシウム合金の強度を16%上げるのに成功したことになる。
 同じ重量で考えるなら、
従来のマグネシウム合金であっても、アルミ系合金より優っていたはずだ。
 ではなぜ、アルミ系合金を駆逐していなかったのだろうか。

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 材料の性質は強度だけじゃ比較できないということだ。

 耐腐食性や、加工のしやすさ、塗装のしやすさ、摩擦の度合いなどもある。
 重量の軽さよりも体積の小ささが重要だったりもするだろう。

 それにひとことで強度と言っても色々と種類がある。
今回の記事での強度は「降伏強さ」のことらしい。

 そういうのを勘案して、
この新しい素材は使えるところに使われてゆくだろう。

 こうして選択肢の幅が広がって行くことによって、
科学や技術の進歩がもたらされる。

 昨日までは不可能だと思われていたことが、
いつの間にかできるようになっていたりするわけだ。

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今回は3つの記事を引用したが、
私としては「くまにちコム」の記事が一番好感を持てるな。
まぁ、実に微妙な差だけれども。

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