ニュートリノと反ニュートリノに性質の差があるかも
またまた、素粒子の標準理論がほころび始めたことを示す報告。
ニュートリノと反ニュートリノで、主要パラメータに差がありそうな結果(英文)
アメリカのフェルミ研究所では、2003年頃から、
MINOSという、ニュートリノ振動のための実験施設が稼働している。
どうやらそこで、ニュートリノと反ニュートリノで、
異なる結果がでているようである。
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最近、あちこちで、
素粒子の標準模型では説明できない結果が
出ているという噂が漏れ聞こえ始めている。
素粒子の実験というのは、
膨大なデータを分析して統計を取り、
既存の理論からのごくごく僅かなズレを見出すようなものが多い。
現場の研究者としては、正確な分析結果が出揃う前に、
「これは何か新しいことが起きていそうだぞ」
という予感があるのだろう。
先日紹介した「ニュートリノ振動を直接的に確認」という話も、
まだ統計的には確実ではないので断言はできないけれども、
おそらく「ニュートリノ」には質量があるだろう、という話だった。
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現在の素粒子論では「標準理論(標準模型)」と呼ばれる
枠組みがあって、1970年代にほぼ確立している。
ここまでは正しいだろう、と大方の研究者が認めている理論だ。
その後、さらに発展させた理論は幾つも出ているのであるが、
今のところの実験結果を説明するためには
標準理論で事足りていたので、
理論を発展させる動機がなかったのである。
標準理論ではニュートリノの質量を 0 だとしていた。
これは、敢えて質量を考えて理論を複雑にしなくても、
今までの結果は標準理論で説明できていたからだ。
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さて、今回の結果は、本当ならばさらにすごい。
「ニュートリノ振動」という現象は
ニュートリノに質量があることの有力な根拠となるものである。
ニュートリノと言っても幾つかの種類があって、
進む過程で別種のニュートリノに変化したり、
戻ったりを繰り返す現象が「ニュートリノ振動」である。
それを調べていたときに、
どうやら普通のニュートリノと反ニュートリノでは
その変化の具合に差があるようだという報告である。
これもまだ確実に認められたわけではなく、
さらなる証拠、他の実験施設での追試なども必要だろう。
本当なら標準理論の範囲を超えているし、
それを説明するために、新たな理論が必要になるだろう。
なぜ我々の知っている範囲の宇宙には「普通の物質」ばかりで、
「反物質」が多量に存在していないのだろう、という、
アンバランスの謎が説明できるようになるかも知れない。
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