半減期
次の計算に入る前に
半減期について、簡単に説明しておこう。
何もかも詰め込んで話が長くなる傾向があるからな。
放射性物質は、その原子核がはじけて、放射線を出す。
「はじける」ってのは単にイメージのために使った表現で、
まぁ、とにかくいきなり前触れもなく放射線を出すわけだ。
放射線を出して別の種類の原子核に変わる。
つまり、放射線を出すほどに、もとの種類の原子核は減っていくわけだ。
次の瞬間に放射線を出すか出さないかは完全に確率で決まる。
原子核の内部で常にサイコロを振っているような状態だ。
そういう仕組みの物理現象なのである。
長生きしてきた原子核だからそろそろはじけやすいぞ、ってことはない。
本当に確率でしか決まらない。
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一個一個を見ている分には確率でしか決まらない現象だけれども、
多数の原子核を集めて観察すれば、
次の瞬間に全体の何割がはじけるのかというのは確実に分かる。
確率というのはそういうものだ。
ある確率で何割かがはじけてしまえば、もとの物質の原子核の数は減るだろ?
その次の瞬間には、その残った量の何割かが、同じ確率ではじける。
さらに減って残った量に対して、同じ割合で、次の瞬間にはじける。
つまり、はじける数は徐々に減っていくわけだ。
でもいつまでもなくならない。
一定の割合で減っていくだけだからだ。
理論上はそうなのだが、遅かれ早かれ最後の一個になって、
そいつがある確率ではじければ全てなくなったことになる。
しかし完全になくなるまでの時間は理論上は無限の時間が掛かるわけだし、
確率でしか分からないことだから、
もう少し確かな目安がほしい。
そこで、元の半分になるまでの時間を使うことにした。
それが「半減期」というやつだ。
例えば、ヨウ素131ってやつは、原子炉の中でウランが分裂して出来る。
こいつの半減期は約8日。
8日経てば、半数は放射線を出して別の物質(キセノン131)に変わる。
キセノン131も放射線を出すのだが、こいつのことは今は置いておこう。
さらに8日経てば、その残ったうちの半数がキセノン131に変わる。
つまり、もとの 1/4 に減っていることになる。
さらに8日経てば、そのまた半分、といった具合だ。
半減期の倍の、16日で完全になくなるというものではない。
原子核内部で起きていることは常に確率なのだ。
過去にどれだけ生き残ってきたかということは関係ない。
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次の瞬間にどれだけはじけるかという割合は
「崩壊定数」と呼ばれている。
崩壊定数と半減期には、次のような関係がある。
崩壊定数 = log 2 / 半減期 ≒ 0.69 / 半減期
この計算をするときには半減期を秒で表わしておかないといけない。
残っている原子核の数に、崩壊定数を掛けると、
次の1秒内ではじける「おおよその」数が求められることになる。
半減期が1秒よりずっと短い場合にはもう少し慎重な計算が必要であるけれども。
しかしそんなに難しくはない。
例えば「次の1マイクロ秒内にはじける数」のように、
もっと短い期間を考えないといけないだろう。
その場合にはマイクロだから、1,000,000 で割ってやればいいわけだ。
これで説明終わり。
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え? キセノン131のことが気になる?
こいつは半減期 11日程度でガンマ線を出して、安全な物質に変わる。
何に変わるかって?
説明が面倒だなぁ。
ガンマ線を出すときには原子核の種類は変らない。
ヨウ素131がベータ線を出してはじけた後のキセノン131は、
内部でエネルギーを余分に持っている励起状態なのである。
これがガンマ線を出すと、
相変わらずキセノン131のままだけど、
励起状態ではなくなってもう安定している。
ガンマ線というのは、大抵、こういう、
内部に余分にエネルギーを持った状態の原子核から出てくる。
ガンマ線を出せばそれ以上は崩壊しないとは限らないけれども、
少なくともキセノン131は安定な原子核だ。
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