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2011年4月11日 (月)

宇宙線はどれくらい?(前編)

今回は自然放射線のうち、
宇宙から来るものについてイメージを描く努力をしてみよう。

こんな記事はすぐに書けるだろうと思っていたが、
少し調べるごとに疑問が増えてしまって時間がかかってしまった。

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宇宙からの放射線の原因は、
宇宙線と呼ばれる、高エネルギーの粒子である。

おそらくは超新星爆発などが由来であろう銀河宇宙線と、
太陽表面の爆発によって加速された太陽宇宙線の二通りに分けられる。

そのエネルギーの幅はとても広く、数MeV~1014 MeV もある。

普通の核分裂で出てくる粒子のエネルギーはせいぜい数十 MeV しかないので、
本当にケタ違いのエネルギーである。
現在最大の加速器でさえ 10 TeV 程度、つまり 107 MeV くらいでしかない。
宇宙線はさらに何桁も上のものが混じっているわけだ。

しかし太陽系由来の粒子は 40 MeV以下だそうで、それほど大したことない。
それ以上は銀河由来だそうだ。

これらの粒子の内訳は、ほとんどが陽子。(つまり水素の原子核)
ヘリウム原子核が少々。さらにほんの少しの種々の原子の原子核。

この辺のことは「このページ」に詳しく書いてある。


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これらの宇宙線は地球の大気上層の気体の原子核にぶつかって
次々と核反応を起こし、地上に直接到達することなく減速する。

その代わり、その反応で出来た粒子(2次宇宙線)が、
さらに下層の濃い大気中に飛び込んでくる。

このような核反応で量産されるのがパイ中間子である。
しかしこれは非常に寿命が短く、地上に到達するはるか前に崩壊する。

崩壊して、ミュー粒子(ミューオン、μ粒子)と
ニュートリノの一種、μニュートリノに分かれる。

ニュートリノは他の物質とほとんど反応しないので、
地球を軽々と貫通するくらいである。
人間の健康への害は考える必要がない。

要するに、地上に到達する宇宙からの放射線はほとんどミュー粒子である。

この辺のことは「このページ」に詳しく書いてある。


ミュー粒子は、電子の200倍の質量を持った粒子で、電荷は電子と同じ。
「電子の重いバージョン」である。


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あれ? おかしいぞ。
するとそれは、ベータ線が重くなったようなものだろ?
ベータ線は空気中では数十メートルしか飛ばないはずだった。

アルファ線はベータ線よりずっと重いので、その分だけゆっくり進み、
周囲の物質により大きな影響を与えて、ベータ線より早く減速するのだった。
空気中では10センチ以下くらい。

だとしたら、ミュー粒子の質量はアルファ線とベータ線の間くらいなんだから、
空気中ではその間くらいの距離しか進めないのではなかろうか?

なぜ数キロメートルの空気の層を突っ切って地上まで来られるのだろう?


これを調べるのはちょっと苦労した。

要するに運動エネルギーが、
普通のアルファ線やベータ線とはケタ違いなのである。
1次宇宙線のエネルギーを引き継いで来ているからだ。

運動エネルギーが大き過ぎると、前の説明とは違った事が起きる。
速すぎて、ほとんど周囲に影響を与えないまま突き進むのである。
その分、減速もあまりしない。
そういうことらしい。

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ところで 2 次宇宙線としては、中間子の他にも
電子やガンマ線も大量に出るはずだ。

そいつらはどこへ行ってしまうのだろう?
なぜ地上に降り注ぐ粒子のほとんどはミュー粒子だと言えるのか?

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電子だって1次宇宙線の運動エネルギーを引き継いでいるはずなので、
運動エネルギーが高いはずだ。
ミュー粒子と同じように空気を突っ切って来れるのではないか?

これを調べるのも苦労した。
というより、さきほどの疑問と一緒になって
頭の中がごちゃごちゃになったわけだ。
両方ともの疑問を矛盾なく解決する答を探す必要があった。


先ほど、エネルギーが高い場合には違った事が起きると話した。
どうやら、エネルギーが高い場合には、
質量が大きい方が減速しにくいらしいのである。

つまりベータ線より、ミュー粒子の方が有利なわけだ。
ベータ線は空気の層で途中で止められてしまっても
ミュー粒子はそれより長く突き進み、地面の中数百メートルにまで達するわけだ。

このあたりの減速の度合いを理論化した
Bethe-Bloch(ベーテ・ブロッホ)の式という公式があるのだが、
この式がどう導かれるのかについてはまだ調べ上げていない。
電子のような軽い粒子には適用できないとか、
色んな情報があって私もまだ困惑している。

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ではガンマ線はどうか?

ガンマ線はさらに透過力が高く、
空気を突っ切って地上に届くのはワケないような気がするではないか?

これについては先ほど紹介したサイトに書かれている。

ガンマ線のエネルギーが高すぎるが故に、
物質と相互作用して、簡単に対生成を起こしてしまうのである。
つまり、ガンマ線の高いエネルギーは、
大気中で多量の電子と陽電子を新たに産み出すのに使われて、
急激に減衰してしまうのである。


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さあ、これで、地上に届いているのはほとんどミュー粒子だということが
納得できるところまできた。

いよいよ量的なことを考えてみたいのだが、
すでに他所様のブログの一回分の記事よりはるかに長くなってしまった。

まだ長くなりそうなので、一旦ここで区切って次回に続けることにしよう。

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