シーベルトは期間が大事
シーベルトという量は、
人間の体重 1kg あたりに受けた放射線のエネルギーの総量である。
ただしアルファ線は健康に与える影響が大きいので、それを考慮して、
エネルギーを20倍にして計算する。
とにかく人間限定の量である。
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ガンマ線を 1 シーベルト受けると、
1 ジュールのエネルギーを受けたことになる。
1ジュールのエネルギーというのは、
1ワットの1秒間分だ。
豆電球を数秒の間だけ灯せるくらいだろうか。
(今調べたら1.5ボルトの豆電球で 0.5ワットくらいだそうだ。)
エネルギーとしては全く大したことはないのだが、
放射線は人間の体の分子を直接砕くという厄介なことをしてくれるので、
これだけでも被害甚大だ。
1シーベルトは人間の健康にとってはかなり大きな量である。
日常使うエネルギーのイメージと
シーベルトのイメージを比較することには
もうほとんど意味が無い。
定義をはっきりさせたお陰で
機械類を使って数値化できているわけだが、
シーベルトの量のイメージは
どれくらいの値で人間にどんな影響を与えるかということで
感覚をつかんだ方がいいだろう。
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問題は、
シーベルトの値だけでは
健康への影響を測れないという点である。
弱い放射線を長時間受け続けていても、
人間の体はある程度、そのダメージを修復してしまえる。
その場合、修復し損なったダメージが徐々に蓄積されていき、
ガン細胞が生じる可能性がゆっくり上がってきたりもするのだろうが、
これは長い期間で現れるかもしれない影響だ。
しかし修復が追い付かないほどのダメージを短期間に受ければ、
その場で確実に組織がやられて、危険な症状が出る。
つまり、どれだけの期間で、
どれくらいのシーベルトの放射線を受けたのかが大事なわけだ。
そこで「シーベルト毎時」「年間シーベルト」などという表現も多く使われる。
片や一時間の量。 片や一年の量。
意味も値の桁も、全く違ってくる。
初期の報道では、
この辺りの違いがほとんど意識されておらず、数字だけが飛び交っていた。
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今でもただ「シーベルト」と言うだけで、
それが「毎時」の意味なのか、「年間」なのか、
はたまた、震災直後から現在までの「積算値」なのか、
よく聞いていないことにはなかなかはっきりしない場合が時々ある。
ああ、ひょっとするとこの用語は難しく感じるかも知れないな。
今言った「積算値」とか「積算量」ってのは掛け算とはまったく関係ない。
単に「合計値」とか「総和」とかの意味だ。
「積み重ねて足していった量」ってことである。
今後はその辺りをしっかり注意して情報を受け止めることにしよう。
数値の大きさ、小ささだけに注目して踊らされないように。
実はもう一つ気をつけた方がいいと思う点があるのだが、それは次回にしておこう。
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コメント
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数値が即ち健康への影響の度合いを表しているわけではない、ということがシーベルトをわかりにくくしているのですね。「感覚をつかんだ方がいい」に頷けます。
投稿: やま | 2011年4月 6日 (水) 23時38分